「営業していてもなぜか噛み合わない」
「自社の商品・サービスの良さがうまく伝わっていない」
「『良いですね』とは言われるものの成約に至らない」
このように悩んでいませんか?
そのような時に「コンセプト設計をしましょう」「ペルソナを作りましょう」と言われたことがあるかもしれません。
売れる仕組みづくりのためにマーケティングを学んでいるとコンセプトやペルソナについて目にすることがあるのですが、いまいちよくわからない、という方のほうが多いと思います。
実際、ペルソナを型どおりに作ってみたことがある人も多いと思います。
しかし、意外としっくりこないまま、「作って終わり」になってしまっているのではないでしょうか?
コンセプトやペルソナは、集客やファン化にはとても重要なものです。
しかし、わからないままでは上手く活用できないため、今回はコンセプトとペルソナについて理会を深めていきましょう。
重要性がわかり、読み終えたらすぐに設計したくなるはずです。
1.お客様は「何に価値を見いだすのか?」
自社の商品・サービスを説明するとき、どこから考え始めていますか?
多くの方は、まず「自分の会社(あるいは商品)が提供できる価値は何だろう」という視点から入るのではないでしょうか。
間違いではないのですが、実は考える視点を変えるともっとうまくいくかもしれません。
「自分たちがどんな価値を提供しているか」ではなく、「お客様は何に価値を見いだしているのか」という視点です。
これは、マーケティングの分野で「顧客起点」という言葉でも表現されます。
たとえば、
「○○という機能があるから便利です」
「値段が安いから喜ばれます」
このような説明だけでは、競合商品と差別化するのは難しくなってきました。
このような背景には、モノやサービスがあふれる市場環境があります。
1-1.モノやサービスがあふれる今は「簡単に選んでくれない」時代
今の日本では、ある程度生活に必要なものが揃う環境にあります。
便利な良いものでも、「出せば売れる」ではなくなってきました。
私たちは毎日のようにSNSやウェブサイトなどで新しい商品・サービスを目にしています。
「何となく安い」「何となく便利」というだけでは差が見えづらいのです。
ここで重要になるのが、「お客様が本当に望んでいる価値」に焦点を合わせることです。
具体的には、以下を明確化しよう、ということになります。
- どんな状況で、その商品・サービスを使いたいと思うのか
- その商品・サービスがないとどんな問題が解決されないのか
- どんな未来像・憧れを形にしたいのか
このような「お客様視点をリアルに描く」ための強力なツールとなるのがペルソナです。
2.なぜコンセプトが大事なのか?
2-1.コンセプトとは「誰に、何を、どのように伝えるか」
コンセプトとは、企業やブランドが「何を目指すか」を端的に表した軸となる考え方です。
もっと噛み砕くと、「誰に、何を、どのように伝えるか」を明確にすることと言えます。
- 誰に(ターゲット/ペルソナ):自社の商品・サービスを利用してくれるお客様の像
- 何を(提供価値):その商品・サービスでお客様が得られるベネフィット(メリット)
- どのように(手段・トーン):どんなトーンやチャネルで伝えるのか(例:SNSの種類や広告媒体、文章・画像の雰囲気など)
2-2.コンセプトが決まるとメッセージがブレない
コンセプトが定まっていると、SNSやブログでの発信内容の軸がブレにくくなります。
「うちは○○専門だから、今日はこの専門性に関連する情報を発信しよう」
というふうに、何を発信すべきかが自ずと決まります。
逆にコンセプトがあいまいだと発信に統一感がなくなります。
- 面白いと思ったネタを何でも投稿する
- 流行りそうなハッシュタグを乱用する
- 誰に向けて発信する投稿なのかわからないものを作ってしまう
これでは見ている方も「どんなサービスを提供しているのか」わからなくなってしまいます。
幅広い層に向けて届けば良いと考えて作る発信内容は、結局「誰にも刺さらない」投稿になりがちです。
2-3.投稿ネタに困りにくくなる
コンセプトに「○○分野の専門家」と書いてあれば、情報を日々キャッチしておくことで自然とネタが出てきます。
- 最近よくお客様から聞かれた質問
- 業界で話題のニュースに自分なりの視点を加える
このように、発信ネタは無限に生まれます。
一方、コンセプトがないと「何を書いていいかわからない」と手が止まってしまい、結果的に投稿が途切れてしまうケースもあるでしょう。
その結果、上述したようにブレた投稿を発信して何とかすることにもつながります。
2-4.ブランドイメージを強化できる
長期的に同じコンセプトを継続して発信し続けることで、「○○分野といえばこの会社だ」というブランドイメージを持ってもらいやすくなります。
- 専門家としての地位を築く
- 競合との差別化
- 価格競争を回避する
コンセプトが定まるとこのようなことも可能になります。
では、コンセプトを定めるのに役立つペルソナについて見ていきましょう。
3.ペルソナとは?ターゲットとの違い
3-1.ターゲットは顧客層、ペルソナ「具体的な1人」
よく耳にする「ターゲット」と「ペルソナ」についての違いを理解します。
「ターゲット」とは一般的に年代・職業・性別などの顧客層を指します。
例えば以下のように、ある程度まとまった集団を指すイメージです。
一方、「ペルソナ」はターゲットの中にいる「具体的な1人の架空の人物」です。
これを壁打ち相手とも呼びます。
たとえば、30代〜40代の働く女性の中にも、ライフスタイルや価値観は人によって大きく異なります。
そこで、ペルソナでは「どのような環境にあり〇〇をよく利用する」など、具体的な顧客としてプロフィールを見える化します。
- 趣味、よく使うSNS、普段の悩み
- 商品を見つけたきっかけや購入の決め手
- 名前、年齢、職業、年収、家族構成
これらを細かく設定することで、「この人だったらどう思うんだろう?」と常に考えながら施策を練ることができるようにします。
3-2.ペルソナが重要な理由
ペルソナを設定すると、売り込みをしなくても「選ばれる」商品やサービスを提供しやすくなります。
理由はシンプルで、ペルソナは本当にその商品を必要としている人物像だからです。
どんな悩み・願望を持っているか
なぜその悩みを解決したいのか、どんな生活を求めているのか
解決がどれほどのメリットになるのか
代替手段(競合商品)と何が違うのか
これらを深く考え、サービスや発信内容を作り込みます。
すると結果的に「自分のことをわかってくれている」と感じたユーザーが選んでくれる状態になるのです。
3-2-1.お土産を渡す相手を考える時、ペルソナを使っている
よくある例えとして、旅行先でお土産を買う場面を想定してください。
- 同僚用に買うお土産
- 恋人や大切なパートナーへのお土産
これらは選ぶ基準がまったく異なりますよね。
同僚用なら「配りやすい個包装のクッキー」を選ぶかもしれません。
一方、恋人へのお土産なら「ちょっと高価でも珍しい焼き菓子や、相手の好みを考慮したアイテム」を選ぶでしょう。
このとき自然に頭の中で「誰に渡すか」をイメージするように、ビジネスでも「どんな人が、なぜ自社を選んでくれるのか」を明確に思い浮かべる必要があります。
4.ペルソナが作る「ブレない軸」と差別化
4-1.ブレない軸の形成
企業側はどうしても「自社都合」で考えがちです。
しかし、ペルソナを丁寧に設定すると、いつでも「このペルソナさんならどう思うか?」という問いを立てられます。
すると、企業都合ではなくお客様が「これを嬉しいと感じるか」を軸に判断できます。
例えば以下のような時にペルソナを基点に考えてみましょう。
- 商品開発時:「ペルソナが求める機能は何か?」「価格帯はどうか?」
- SNS投稿の時:「ペルソナが興味を持ちそうな情報は何か?」
- サイトリニューアル時の:「ペルソナにとって使いやすいUIは何か?」
お客様視点で考える力が身についてきます。
4-2.価格競争からの脱却
差別化ができず、「安売り合戦」になってしまうと、中小企業にとってはとても厳しい状況が続きます。
大手企業に価格で勝つのは困難だからです。
一方で、ペルソナを設定してその人の本当の悩みや願望に応えるサービスを提供できれば、「価格だけではない選択肢」を提示できます。
5.ペルソナを作成する手順とN1分析
5-1.既存顧客の深堀りから始める
ペルソナを作る際、最初におすすめなのは既存のリピーターやヘビーユーザーの深掘りです。
実際に繰り返し購入している方がいれば、その方がどんなきっかけで自社を知り、何が決め手で選び、どんな場面で利用しているのかをインタビューしてみましょう。
「どんな課題があって探していたのですか?」
「ほかの商品とも比較しましたか? そのときどう感じましたか?」
「実際に使ってみてどうでしたか? どんな感情が生まれましたか?」
このような質問をするだけでも、商品のどこに価値を見いだしているか、生の声が得られます。
そこからペルソナ像を固めていくと、机上の空論に陥りにくくなります。
5-2.N1分析でリアルをつかむ
N1分析とは、「たった1人」のユーザーを徹底的に深掘りして事業成長につなげる手法です。
マーケターの西口一希氏が提唱しており、書籍などで詳しく解説されています。
参考:『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』西口 一希(著)
大勢へのアンケートでは「60%の人が○○と回答」というような平均値や全体傾向はわかります。
しかし、実際の行動や心理の具体性が見えにくい部分があります。
それに比べてN1分析は、あえて1人の行動・心理を深く追いかけることで、思い込みや既成概念を覆すような新たな価値を発見しやすいという特徴があります。
例:
ある化粧水を使い続けているユーザーがいる
インタビューをしてみたら、「実は日中の乾燥対策に職場でこっそり使えるスプレータイプが助かる」というニーズが見えた
その結果、スプレー化粧水のラインナップを増やしたところ、他社との差別化に成功した
このように、自社の商品・サービスのどこが良いのか、なぜ使っているのかを理解すると、価値が見えてきます。
6.ペルソナの落とし穴
6-1.欲張りすぎてしまう
ペルソナ設計でありがちなミスは、「広い層にアピールしたい」という気持ちが強すぎて、20代から60代まで全員、男性も女性もOK、というように広げすぎるケースです。
もちろん、実際には幅広い層が購入する可能性がありますが、ペルソナはあくまで壁打ち相手として最も響きそうな1人を描くことが大切です。
実際に運用していると、「結果的に他の層も集まってくれた」ということがあり得ます。
そのきっかけをつくるためにも、まずは一番手応えのある顧客像に集中してみてください。
6-2.スペックだけで終わる
ペルソナを作る際、年齢や年収、職業などの数字を並べるだけで終わってしまうケースがよくあります。
「この人がどんな気持ちで商品を探し始めるのか」
「どんなライフスタイルや価値観を大切にしているのか」
ざっくりとした統計からの傾向で作るペルソナでは、上記のようなことが見えてきません。
例えば以下のような大雑把なものです。
- 30代、年収400万円、都内勤務
- 趣味:旅行
- SNS:Instagram
この程度のプロフィールでは、実際の投稿ネタや商品改良のアイデアにはつながりにくいのです。
「なぜ旅行が好きなのか」
「どんな体験に満足を覚えるのか」
といった感情面まで踏み込んでこそ、ペルソナ設計が生きてきます。
7.ペルソナはどんどんアップデートしよう
ペルソナは、実際の施策や会議で繰り返し使うことで威力を発揮します。
新商品の企画会議で「ペルソナの○○さんなら、この新機能をどう思う?」
宣伝用のキャッチコピーを考えるとき「○○さんの心に一番響く表現は何?」
このように、ペルソナを常に呼び起こして壁打ちしていく習慣を作ることが重要です。
作って終わりではなく、考える時にいつもペルソナの視点から物事を考えます。
企画が進むうちに、ペルソナが変化するのは自然なことです。
より理解が深まったり、新たなペルソナが見えてくることもあるでしょう。
部署横断でペルソナを共有し、定期的に見直しやアップデートを行うと、社内の意識が自然とお客様起点に切り替わっていきます。
8.まとめ
ペルソナを明確にすると、単なるデータや数字だけでは見えてこなかった「お客様の感情」や「本当に求めている価値」が浮かび上がってきます。
SNSやWebでの発信だけでなく、商品企画やサービス設計そのものがお客様のために深まっていくのです。
初めてペルソナ設計に取り組むと、少し面倒に感じるかもしれません。
しかし、実際に作ってみると「こんなニーズがあったのか」「ここが本当に喜ばれているポイントなんだ」と新しい発見が得られることも多いものです。
価格を下げる以外の戦略を考えるきっかけにもなりますので、ぜひ一度チャレンジしてみてください。
「たった1人の本当のお客様を理解する」という視点を持って、オンリーワンの魅力を発信し、より多くの方に選ばれる企業・ブランドを目指しましょう。